大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1177号 判決 1949年12月13日

被告人

金明錫

主文

本件控訴を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人並に被告人弁護人加藤謹治の控訴趣意は末尾添付の控訴趣意書と題する各書面記載の通りである、よつて訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実について精査を遂げ次の通り判断する。

弁護人の論旨第一点の(一)について

原審公判調書を閲するのに、檢察官は刑事訴訟法第二百九十六條に規定する所謂冒頭陳述をしなかつたことは所論の通りである、しかしながら証拠の取調請求に際しその各証拠により証すべき事実を各別に陳述しているのであるから、本件公訴事実の内容に照らし本條の趣旨である檢察官の立証方針は明かにせられたものというべく、されば檢察官が本件の場合刑事訴訟法第二百九十六條の所謂冒頭陳述を特にしなかつたとしても、それは帰するところ判決に影響を及ぼさない訴訟手続上の法令違反に過ぎないものと断ずべく論旨は理由がない。

論旨第一点の(四)について。

被告人の司法警察員に対する供述調書及び檢察官に対する供述調書が記録に点綴されていること、並に右各書類は証拠として取調の請求はなく從つて証拠調のなかつたものであることは記録上明白である、かような書類が提出せられ記録に点綴せられることはもとより妥当を欠くけれども原判決は之を証拠として採用していないのであるから所詮判決に影響しないことがらであり所論の主張は首肯し得ない、論旨は理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例